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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

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ゲッツ板谷プロフィールphoto

板谷宏一

1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

Vol.99 地獄の免停スパイラル


 この4年間というもの、オレの首を真綿でグイグイと締め付けているものがある。
 車の運転免許停止処分である。ドライブが趣味でもあるオレは、普段から車に乗って好きな食堂、レストラン、ラーメン店、蕎麦屋などを訪れている。また、ウチから約15キロ離れた西武ドームに大好きなライオンズの試合を見に行く際も必ず車に乗って出発し、そして、試合が終わると友達の塚ポンが営業している「まるや商店」という串カツ屋に仲間と訪れ、楽しく飲み食い(もちろんオレは、お酒は飲まないけどね)をしているのである。 
 元々オレは、小学2年の頃から電車の中央線に乗って遠くの学習塾に通っていたこともあってか、車の免許を取ってからは“とにかく電車は勘弁!”というキーワードが出来上がってしまい、特に25歳の時に物書きになって以降は、電車に乗るのは年に1~2回になっていた。つまり、それほど電車は嫌いで、車は大好きだったのである。

 ところが、2017年の6月、オレは友達との待ち合わせ時間に急いでいて、白バイの警官に一時停止線不停止で捕まってしまった。減点は2点。が、それは、ただの2点ではなかった。その時のオレは3年以内に行政処分(免許停止処分)を2回受けており、その上で2点減点されると1発で90日間の免停になってしまったのだ。そう、つまり“過去3年に行政処分2回以上”を食らうと、2点以上の減点を食らった時点で90日以上の免停が待っている。要するに、この免停スパイラル状態にハマると、それ以降は丸1年間違反も事故も全く犯さない限り、ショボい交通違反でも、ほぼ1発で長期の免停になってしまうのである。今、オレは何で“ほぼ1発で”という言葉を使ったかというと、免停スパイラルに入っても減点2点未満は免停にはならないのだが、数有る違反の中でも減点が1点で済むのはごく一部で、殆どの場合が2点以上の減点を食らうからだ。

 で、話を戻すと、2017年6月に免停スパイラル状態で一時停止線不停止の違反行為で捕まったオレは、一発で90日間の免停。が、当然知ってる奴も多いとは思うが、この免停を食らった場合、「停止処分者講習」という2日間の講習を受けると、免停期間がほぼ半分に減るという助け舟があるのだ。ただ、この講習を受けるには23400円の手数料がかかり、それより何より朝9時から夕方4時までの超退屈で厳しい授業を丸2日間にわたって受けなければならないのである。これが辛い。特に午後になると眠気との戦いになり、万一居眠りでもしようものなら、他の受講生の前で教官から怒鳴られ、それが度重なると講習を中止されて帰らされるハメになる。が、90日間の免停が45日間になるというのは、非常にありがたいことなので、もちろんオレも停止処分者講習を受けて8月の中旬には免許が帰ってきた。
 が、改めて言うが免停スパイラル状態というのは、そこからが本番なのである。つまり、その8月の中旬まで無事故無違反で通さないと、そのスパイラルからは抜け出せないのだ。で、ここで多くの奴がこう思うだろう。

(その1年間、スピードと一時停止線で止まることを特に注意してれば、そうそう捕まりゃしねぇよ)

 もちろん、オレもそう思ってた。ところが、その年の瀬の12月18日。本を買いに行こうと思って5キロほど離れた本屋を目差していたら、いきなりケータイに何者からかのLINEが届いたという合図の音が流れた。で、(誰だぁ?)と思いながら、左手で二つ折りのケータイを開いた瞬間、目の前からピィピ~~~!!という笛の音が鳴り、そっちの方を見ると赤色棒を持った警官が「はい、コッチに入って下さぁ~い!」と車を脇の路地に入れろとオレに指示してたのである。
 結局、ケータイ電話を掛けながら運転してたということで、もちろん一応は抗議もしたが『携帯電話使用等』で1点の減点(現在は更に重くなってるけど)。ガックリきたが幸いにも1点だったので免停にはならず、が、せっかくあと8か月頑張れば免停スパイラルから逃れられると思ったのに、また1からの出直しじゃんかよというショックを受けた。

 そして、翌年2018年の3月6日。仕事の打ち合わせが終わった帰りにウチから割と近くにある、各地の日本酒が安い値段で売られている酒屋に行こうと普段はあまり通らない道で信号待ちをしていると、青になってその信号を右折しようと思った直前に、自分が右折したい道はもう1本先の30メートル先ぐらいの道だということに気づき、慌てて左車線に車を移し、30メートル先を右折した。そして、20~30メートル走っていると白バイのサイレンが聞こえ、一体誰が違反をしたのかとキョロキョロしていたら、白バイの警官がオレの真横まで来て「はい、運転手さん。この先の左手に止まって下さぁ~い」と。で、その通りにした後、オレは夢中で「何かオレ、違反したのかよっ⁉」とその白バイ警官に訊いたところ、さっきオレが慌てて左車線に車を移したところは黄色い車線で、つまりは車線変更が禁止なところだと。でも、そこで止めると交通渋滞を起こしてしまうので、あえて右折させて少し走ったところで止めたとのこと。結局、『指定通行区分違反』ということで、これも珍しく減点は1点だったが、去年の12月18日の違反点数と合わせると2点。つーことで、その後、府中の運転免許試験場から過去3年以内の行政処分歴は2回で、累積減点は2点だから5月10日から90日の免許停止ですよ。つきましては、5月10日に免許証を持って運転免許試験場に出頭しなさいという通知が届いた。

 ちなみに、車の運転免許の停止には皆もわかってるとは思うけど、変な間がある。捕まって免停の累積点数になったからって、捕まったその日から免停になるわけではなく、運転免許試験場からアナタは〇月〇日から免許が停止ですよという通知が来た、その〇月〇日から免停になるのだ。要するに、捕まってから免停が始まるまでに多少のタイムラグがあって、通常それは半月~1カ月ぐらいあるのだ。よって、免許が停止になる前に車を使わないとできない用事をあらかじめ済ませちゃおうと思ったオレは、免停になる前日の5月9日に車を使って色々重たいものを運ぶ作業をこなしてる最中に、あろうことか、大学生を轢いてしまったのである……。ま、人身事故とは言っても、相手の怪我は大したことはなく、壊れたのもその大学生が乗っていた自転車のサドルが少し曲がった程度だったが、もちろん警察が中に入り、その結果、オレは新たに『交差点安全進行義務違反』で4点の減点を切られることになった。
 翌日、オレはハンパなく嫌な予感に包まれながら府中の運転免許試験場に出頭した。そして、その予感は見事的中。90日の免停処分にさらに4点の減点が加えられ、オレは免停を飛び越して免許取り消し処分になってしまったのである。
 頭の中が真っ白になっていた。今回のケースで免許取り消しになると、まず1年間は欠格期間ということで新たに免許を取ることが出来ず、その後、運転免許試験場で1発勝負で実技試験を受けても何回も落とされるため、改めて自動車教習所に通わねばならなくなる。つまり、そんな地獄のような段取りに加えて、教習所に通うわけだから金だって30万円前後はかかるのだ……。

 で、オレはその時、約1時間後に公安委員会で改めて審議された結果が発表されるのを待つために、気がついたら試験場近くにあるファミレスのテーブルに座って放心状態になっていた。そして、再び試験場の教室に集められたオレたち違反者は、1人1人名前を呼ばれ、中央の席に座るとその前の席に座っている検事だか何だかわからないちっちゃこい男から決定した処分を言い渡された。

 [酒気帯び運転で免許取消し]
 [酒気帯び、50キロ以上の速度超過で免許取消し]
 [共同危険行為等禁止違反で免許取消し]

 そんなのばっかだった。そして、そんな面々は処分を言い渡されると、見栄を張ってかどうかはわからんが、涼しい顔をして教室から去って行った。つーか、オレもコイツらと同じかよっ⁉と思った。いや、昔の族やヤクザの予備軍をやっていた時代ならわかるが、現在は一応はバカなことも人に多大な迷惑をかけることもなく暮らしているのに、こんな現役バリバリの奴らと一緒の処分を受けるんかいっ⁉と思った。
「はい、まだ自分の番号を呼ばれてない人は、そのままの状態で主宰者に一礼してください」
 部屋に5人の違反者を残したまま試験場の職員がそんなことを言い、オレも番号を呼ばれてなかったので、とりあえず訳も分からず前の席に威厳を持って座っているちっちゃこい男に皆と一緒に頭を下げると、その主宰者と呼ばれる男は颯爽と教室から出て行った。そして、それと代わるようにして、オレたちのすぐ前に出てきた試験場の職員が次のような発言をした。
「えーー、ここに残った皆様たちの処分は公安委員会での審議の結果、悪質性が低いということで今回免許の取消しではなく、免許の停止ということになりました。で、今からその停止期間を書いた書類を1人1人にお渡ししますので、名前を呼ばれた人は前に取りに来て下さい」
(たっ……たっ……助かったあああああ~~~~~~~っ!!)
 オレは不覚にも感激のあまり泣きそうになっていた。ちなみに、オレの書類には『150日の免停』と書いてあった。もちろん、普通に考えれば、とんでもなく長い停止期間だったが、その時のオレには僅か数日の期間に感じ、教室を出るとそのまま同試験場4Fにある停止処分者講習(免停期間短縮講座ね)の申し込みに向かった。

 つーことで、約10日後に受けたその2日間の講習で、オレの150日の免停期間は80日に縮まり、ここ数年のようにその停止期間は電車やバスやモノレールに乗ることになった。もちろん最初の頃は面倒で仕方なかったが、いつまでもブータレた気分で利用していても何だったので、その期間は元々免許なんかはもってない男として過ごすことにした。そして、免許が戻ってくると、今度はスピードも出さず、一時停止線は必ず止まり、黄色いラインが引かれた2車線以上の道路では決して車線変更はしないということも頭に叩き込んだ。そして、約7カ月ほど、そうした超安全運転で過ごしていた2019年5月11日のことだった。
 その晩、千葉県に住む友達と遊び、オレは途中の加平インターから首都高速に乗って自宅に帰ろうと思った。ところが、加平インターの一般道からの乗り口というのは、ループ状の道を上がって高い位置から高速に乗るのである。で、まずは一般道から少し逸れたところにループ状の入口があり、そこから入って登り坂を5メートルぐらい走った途端、いきなりそこに張っていた警察官に止められた。

「オレ、酒なんか飲んでないっスよぉ!」
 オレは、てっきり飲酒の検問だと思って、窓を開けてそんな言葉を発した。
「いや、お酒の検問じゃなくて、あなた、何でスグ後ろにある信号で止まらなかったの? あなたが来た時は、あ、今もそうだけど赤ですよ」
「えっ?」

 そう、そのループ橋の入口には信号があり、その信号はループ橋の入口を横断する歩行者のために付いているのだ。が、そこを横断する歩行者は普段はあまりいないため、その信号は殆どが黄色の点滅状態なのだが、1分間に10秒ほど赤になるのだ。そして、赤の時はその横断歩道の前で信号が点滅になり、歩行者がいなくなるまでは停止し続けなければいけないのである。結局、その時オレは「信号無視」で2点を切られ、数週間後に、はい! 120日間の免許停止が決定。
 で、オレは呆然となりながらも、再び停止処分者講習を申し込んだ。そして、その受講日の休憩時間に隣の席に座ってた40歳ぐらいの兄ちゃんに机から落とした講習用の教科書を拾ってもらい、そのお礼を言うついでに自分はもう3年間もこの免停スパイラルの中にいると告白すると、なんとその兄ちゃんは自分はそのスパイラルに8年間もいると返してきたのだ。そして、オレが驚いていると、自分は個人で運送屋をやっているのだが、このままだといつ免停スパイラル
から抜け出せるかわからないので、今年は赤字覚悟でトラックの運転手を雇うことにしたと言う。そう、免停スパイラル界には上には上がいたのである……。
 で、その2日間の睡魔との闘いの停止処分者講習によって免停期間が60日になり、それも明けて2019年9月9日に免許が返ってくると、オレは目を閉じて次の言葉を復唱した。

(スピード出さない。一時停止線は必ず停止。黄色い車線ラインは絶対跨がない。ケータイは車に乗る時は電源を切る。高速でも100キロ以上は出さない。クラクションを鳴らされてもいいから、わからない場面に出くわしたら、とりあえず車を停める。約束に間に合いそうになくても絶対に焦らない。後部席の同乗者にも必ずシートベルトはさせる)

 そして、年が明けて2020年の6月20日。3カ月も経たないうちに無事免許証の限定がようやく0点に戻るところまで来たので、もしそうなったらその日は友達を行きつけの串カツ屋に招待し、オレの奢りで宴会を開こうなんて考えていた午前中のこと。地元、立川駅前で友達と待ち合わせしていたオレは、車に乗って南口の信号を左折しようとすると、突然1人の警察官がオレの車の前にでできて「ストップ!! ストップゥ~~!!」なんて言ってんのである。で、反射的に「何だよ!?」って怒鳴ったら「赤信号ですよ!!」との返答。
 そう、オレは立川駅南口の真ん前にある信号を左折しようとしたのだが、正面にある信号を全く見ておらず、その少し左にある歩行者用の信号が青だったので、何の迷いもなく左折を始めてしまったのである……。
 つーことで、またもや「信号無視」で2点を切られ、過去3年以内の行政処分歴が3回なので、またしても120日間の免許停止が決定。いや、今回の違反に関しては、全く何一つ言い訳出来ない、まさしく自分の注意力の無さっつーか、運転能力の欠如の問題だった。が、オレは先月の9月28日に停止処分者講習を終え、11月15日まで免停を食らった後、またしても1年間の免停スパイラルとの戦いの火蓋を切って落とそうとしているのである。



 完全なる自動運転の車って早く発売されねえかな……。


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