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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

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ゲッツ板谷プロフィールphoto

板谷宏一

1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

Vol.101 ド偉いチョイ役(前編)


 ある日、後輩のシンヤくんから「板谷さん、今夜映画観ませんか、立川の映画館で」という電話があった。
 いつも仕事で出張ばかりしているシンヤくんからの誘いは珍しく、おまけに電話が来た当日の誘いというのは滅多になかった。
「え、いいけど、何ていう映画を観たいの?」
「『ミッドナイトスワン』って映画で、スマップのメンバーだった草彅が主演なんスよ」
 そう聞いて、あちゃーと思った。その映画なら数週間前に劇場で観た作品が始まる前、予告編の中の1本として流れていたものだった。正直、オレは元スマップの中でも最も草彅には興味が無く、その上、彼がオカマみたいな役をやるという映画だったので、尚更その予告を見て鑑賞したいという気持ちは湧かなかった。
 が、今から約3年前。オレは今回と同じようにシンヤくんから八王子の小さなライブハウスでのコンサートに誘われ、何の期待もせずに、その20数人で満席になるライブハウスに行った。するとステージに立ったのは竹原ピストルで、当時はまだ今のように誰でも知ってるという感じでは全然無かったが、オレは一撃で彼のファンになってしまったのだ。そう、つまり、シンヤくんはその対象物によっぽど自信がある時にしかオレを誘ってこず、ましてやその当日に声を掛けてくるってことは、出張の合間を縫って奇跡的にそれを鑑賞する時間が出来たに違いなかった。

 で、その日の夜9時。立川のららぽーと敷地内に新たにできた映画館、そこで「ミッドナイトスワン」を観たオレたちは2人して涙を流していた。
「いや、シンヤくん。またヤラれたよ、オレ。つーか、草彅が好きになってきちゃったよ」
「ホントにいい映画でしたね」
「うん……。この監督って脚本も書いてんだろ。凄え才能だなあ~。……あ、それはそうとシンヤくん。オレ、東映の菅谷さんに映画のチョイ役に出て欲しいって頼まれて、いいっスよ!って軽く返事しちゃったんだけど、どうやらそれってヤクザ役みたいなんだけどさ。板谷さんの知り合いで、誰か他にもチンピラ役をやってくれる人っていますか?って訊かれたんだけど、シンヤくんは忙しいよなぁ~?」
「それ、いつなんスか?」
「え~とぉ……来週の火曜日だよ」
「明日、会社の上司にその日休めるかどうか聞いてみますんで、万一休めたら是非出演させて下さい」
「いや、でも、無理しないでな。ノーギャラだし」
「はい。あくまでも休みが取れたらってことで」

 その後、オレらは映画館の真向かいにあるららぽーとのショッピングビル、その屋上の駐車場に停めたシンヤくんの車に向かおうとしたのだが、あろうことかエレベーターが作動しないのである。しかも、階段がある方は既に鉄のシャッターが下りていた。
「おいおい、夜中の11時半だとは言え、オレたちはららぽーとの敷地内の映画館で映画を観た客なんだから、ちゃんとエレベーターぐらい作動しとくようにしとけっつーーの!」
 思わずそんな文句を漏らすオレ。
「あっ、板谷さん。あそこに警備の人がいましたよっ」
 そう言うと、その警備員を呼び止めて事情を説明するシンヤくん。そして、少しすると……、
「板谷さん、動いてるエレベーターまで案内してくれるみたいなんで、付いていきましょう」
 という声がして、更にその警備員に何度も頭を下げる礼儀正しいシンヤくん。で、オレらは真っ暗になっているららぽーとビルに沿って歩く警備員、その背中を見失わないように必死で付いて行ったのだが、5分経っても10分経っても、その警備員は立ち止まらず、そうこうしているうちにオレたちは巨大なららぽーとビルを一周してしまっていた。
「あっ!」
 思わずそんな声を上げるオレ。そうなのである。オレたちが歩き始めた反対方向に10メートルほど行ったところに、ちゃんと全部の電気が煌々と輝いてるエレベーターの扉があったのである。
「何だったんだ、今までのこの夜の八甲田山は………」
 オレからそんな声が漏れた次の瞬間、
「うおいっ、この警備員!! テメー、ここで働いてんのに、どうしてこんなことがわからねえんだよおおおっ!! 殺すぞっ、この野郎ををををを!!」
 って、シンヤくん、もういいから。オレたちも特級のキチ〇イになってるよ……。



 で、その翌日。シンヤくんから『来週の火曜日、休ませてくれることになりました。チンピラ役、OKです!!』ってLINEが来て、オレたちはその映画の撮影に参加することになったのだが、そこでド偉いものが息を潜めてオレを待っていたのである。------以下、次号。





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